脂肪酸スキンケア

オイルの使い方しだいで、年齢肌、トラブル肌を効果的に改善させることができます。

脂肪酸スキンケア:実践編[抗菌]

脂質というと、高いカロリーがあるので、菌や微生物繁殖の栄養になってしまいそうなのですが、実は、脂肪酸自体がある種の菌に対して抗菌作用をもっています。といっても、積極的に菌を殺しにいく、というよりは、増殖を抑えたり、皮膚や組織への影響をさせにくくする、といった程度ですが。

それが、細菌の一種で、グラム染色した際に青色に染まる、グラム陽性菌です。また、酵母(カビ)に対してもそうです。脂肪酸が、
細菌などの細胞表層に吸着して活動できなくさせたり、細胞膜を壊してしまったりするのです。ですから、たとえば、傷に油を塗ると、それだけでグラム陽性菌や酵母の増殖を防ぐ効果を持っています。

しかしながら、実際、人体に悪影響のある菌はほかにもありますし、とくにグラム染色した際に赤色に染まる、グラム陰性菌は身近で、症状を悪化させやすい菌として挙げられます。(黄色ブドウ球菌など)

近年の研究で、このような菌に対しても抗菌作用をもつ脂肪酸があることが発表されています。それが、中鎖脂肪酸、という、
分子構造において炭素鎖が比較的長いもののグループの脂肪酸です。
当初、炭素鎖が長いものほど効果があると考えられていたようですが、最近では、あまり長いものよりも、炭素数が8から10程度の中鎖脂肪酸のほうが強い、といわれています。

中鎖脂肪酸のうち、とくに抗菌力が強いものが、ラウリン酸、次いで、カプリル酸やカプリン酸、ミリスチン酸などが並ぶとされています。これらは、グラム陽性、陰性、どちらに属する菌にも一定の抗菌作用をもつ、ということが言えます。

この他、真菌などに対しても効力をもつ脂肪酸がある、という報告もあり、各脂肪酸の構造次第で、菌や微生物に対する効力が違うと考えられています。菌の付着によって影響を受け易いのは、皮膚や消化器系などの、いわゆる上皮器官ですが、油脂自体に菌を抑える作用があるのであれば、薬などの副作用のあるものを利用せずに、食生活やスキンケアのレベルで対処や予防が可能になるため、脂肪酸の菌への作用は非常に注目されています。
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ラウリン酸(C12H24O2):飽和脂肪酸

ラウリン酸


石鹸の材料としてよく用いられている。人の母乳や、牛乳、乳製品にも含まれている。
多く含むオイル:ココナッツオイル、パーム油など


カプリル酸(C8H16O2):飽和脂肪酸

カプリル酸



カンジダ症の原因菌となる、カンジダ菌を抑える効果があるとして、注目されている。
多く含むオイル:ココナッツオイル、母乳、バター、など


近年、オイルスキンケアによる抗菌を私は非常に注目してきたのですが、最近、とくに気になっているのが、私たちの皮膚組織、いえ、体の各部でも活躍している抗菌物質があるのですが、それが「抗菌ペプチド」と呼ばれるものです。

生物の体には、たいてい、命を守るための機能が備わっています。そういった機能を「免疫機能」としてひとまとめに言ったりしますが、人間ほどの複雑なしくみをもっていない生物でも、他者の侵略を防ぐしくみはもっています。そういったしくみの中でも、最も原始的なものに、抗菌物質の生成、分泌があります。命の最小単位である、細胞自体にそういった、他者の侵入をこばむ物質「抗菌ペプチド」をつくる機能があるのです。どういう物質を作るかは、その生命体や細胞によって異なりますが、人間の体内で主に活躍している抗菌ペプチドには「α-ディフェンシン(
defensin)」「β-ディフェンシン」「カテリシジン(Cathelicidin)」「ダームシジン(dermcidin)」などがあります。

このうち、皮膚の抗菌を司るのが、β-ディフェンシン、カテリシジン、ダームシジンで、皮膚組織のなかで形成され、汗や皮脂にまざって皮膚上に分泌され、皮膚に付着した有害な菌を殺しています。
この物質を作る力が、先天的に、あるいは
老化やストレスなどで小さくなったりすると、抗菌ペプチドが充分に皮膚上にない状態になり、付着した有害な菌や微生物が繁殖、皮膚炎などの原因となるのでは、と考えられているのです。事実、アトピー性皮膚炎などの人の皮膚には抗菌ペプチドの分泌が充分でないことが確認されています。

抗菌ペプチドをいかに増やし、分泌させるかにおいては、発汗に伴うため、まずは運動が推奨されますが、もともとの生成力が弱い場合には、抗菌ペプチドを作るために必要な栄養が食事に足りているかを見ます。抗菌ペプチドを作り出すには、充分な量の脂質や蛋白質が必要ですが、近年、現代人に不足がみられ、かつ抗菌ペプチドの生成にも関わっているものに、ビタミンDがあります。

ビタミンDは唯一、人体で作り出せるビタミンとしても知られていますが、近年の研究では、このビタミンD量が不足している人が多くみられ、骨や皮膚の形成に影響しているのでは、と考えられています。また、外からビタミンDを皮膚に与えたところ、皮膚の免疫機能が復活した、という報告もあります。アトピー性皮膚炎においても、ビタミンDの外用効果が認められた、という報告もあります。

ビタミンDは脂溶性のビタミンで、オイルのなかには、ビタミンDを多く含んだものもあります。
たとえば、スイートアーモンドオイルや、バオバブオイル、オリーブオイル などが挙げられます。 肌本来の抗菌力を上げたい、と思ったら、こうしたオイルを使って、ビタミンDの補充うぃすることで、抗菌ペプチド量の向上が期待できるかもしれません。

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