脂肪酸スキンケア

オイルの使い方しだいで、年齢肌、トラブル肌を効果的に改善させることができます。

脂肪酸スキンケア:基礎編[概論]

1 努力では止められない変化

 基礎編でお話しましたように、皮膚の健康にはベースとなる、栄養、活動、睡眠に気を配る事が大切であることがお分り頂けた、と思います。しかし、時には、決まったリズムどおりに一日を過ごすことは難しいことも多いですし、まして、肌のことばかりを気にかけて生活できる人ばかりではありませんね。何より、私たちは一刻一刻、時を経るごとに、体もまた、時を刻んでいるわけで、時の経過による皮膚の変化を、努力によってある程度ゆるやかにできることはあっても、完全に止めることはできないのです。そうした、環境や年齢による変化が、大きく訪れた時、支えになるのがスキンケアです。


2 QOLのキープや、向上に重要

 皮膚にトラブルを抱えていると、活動の際に、集中できないことがあります。また、現実問題として、よほどのことでなければ、肌のコンディションを理由に、仕事や学業を休むわけにはいきませんね。さらに、皮膚は傷つき易いわりには、こじらせると回復が遅くなることがあり、小さな異変はなるべくはやく気づき、すばやく対処することが肝要です。ただし、スキンケアの効果は一時的であることが多いです。しかし、それによって、1日の活動のクオリティがキープされたり、高まることもありますから、スキンケアは、日々のQOLを保つためにも必要なことです。


3 スキンケアにおいては、見つめ続けることが大切

 肌は、私たち一人一人がもつ、遺伝的要因にはじまる先天的条件と、ライフスタイルなどによる後天的条件によって、多様に異なります。ですから、皮膚は人それぞれであるのが当たり前なのに、皮膚のコンディションの評価にあっては、一定のポイントがあります。まずは、傷や炎症がないか。さらに、美容においては、潤いや、透明感の有無も重要なポイントですね。これがあればあるほど、健康で、なおかつ、美しい、と評価できる皮膚だといえます。
 この評価を求めて、スキンケアを試行錯誤しますが、肌はなかなか、応えてくれないことがあります。しかし、、それでも、毎日の自分の肌をみつめていると、その傾向がつかめてきます。悩みながらも、自分の肌と向き合うことは大切なことなのです。その傾向に応じて、きちんと対策すること。これが、スキンケアにおける基本です。 

1 皮膚や皮脂膜は、体の部分によって異なる

皮膚は私達の全身において、すべて同じではありません。場所によっては、厚い皮膚の部位もあるし、とても薄いところもあります。さらに、皮脂膜においても違いがあります。汗をかきやすいとろ、かかないところ。顔に至っては、このせまい範囲に、皮膚や、皮脂膜の状況がまったく異なるポイントが集まっています。重要な感覚器が集中する顔面においては、このような微調整はあってしかるべきなのですが、これが、顔の肌のコンディションを一定に保つことの難しさの一因でもあります。

皮膚の特に厚い所(頭頂部、背中、手のひら、足の裏など)
    特にうすい所(まぶた、唇、各間接の裏など)

皮脂孔の特に多いところ(頭皮、顔のTゾーン、脇など)
    特に少ない所(目のまわりなど)


2 適したスキンケア材に出遭うことが重要

 現在、私たちの周りには多くのスキンケア用品が売られ、価格帯も幅広く、選ぶのに事欠くことはよほどありません。メーカーは競って、よりよい製品を作ろうと日夜研究と努力をしていますから、いい製品がたくさん生まれています。それを、私たちは、自分の肌質や傾向、ほしい機能を求めて、商品を選びます。これ、と思うスキンケア材に出遭えると、毎日のスキンケアの時間は短縮できますし、さらに、ほしい機能によって、自分の肌が自分の望む状態になってくれれば、こんなに喜ばしいことはありません。さしあたり、あまり高望みせず、少なくとも、皮膚の劣化の原因となる乾燥をいかに防いでくれるか。
それをポイントに、自分にあったスキンケア材に出遭うことが、スキンケアの重要ポイントです。


3 スキンケアに迷ったら、シンプルに立ち返ってみる

 スキンケア材選びはまずある程度使ってみなければ結果がわからないことがほとんどです。様々な売り文句や、並べられた効能で選びますが、なかなか自分にしっくりくるものに出遭えないことがあります。自分にあったスキンケア材に出遭うのは至難の業です。また、使い出した最初のころは、とても効果があったのに、使って行くうちに、効果が感じられなくなってくることもありますね。肌は環境だけでなく、年齢によっても変わりますから、自分は意識しなくとも、肌タイプが変わっていることもあります。
そうした自分の気づかぬ肌の変化のたびにスキンケア材をあれこれ試行錯誤して選び直すのは、大変な労力がいりますし、また金銭的にも問題ですね。そうして、スキンケア材選びに疲れてしまうこともあります。そんなときは、一度、最もシンプルなスキンケア方法に立ち返って、今の自分の肌質がどういったものなのか観察しなおすのも一つの手です。


4 肌質を見極める

 自分の肌の現時点のコンディションを見極めるには、まずデフォルトの状態を見る必要があります。これには、洗顔後、何もしない状態で、皮脂膜がどのように形成されていくのかを見る必要があります。
 いつもの洗顔後、タオルで水気を拭き取った後、何もつけずに、そのまま放置します。それまで皮膚上にあった皮脂がとれてしまった状態ですので、しばらくはつっぱった感じがするでしょう。さらに時間を置き、だいたい30分くらい経過してくると、さっきまで乾燥していた部分が、元通り潤ってくるでしょう。その一方、相変わらず乾燥したままのところもあると思います。潤ってきたところは、皮脂膜が形成されはじめ、水分の蒸散を防いでいるのです。しかし、乾燥したままのところは、皮脂膜が形成できていないため、水分の蒸散を止められずに、どんどん乾燥してしまうのです。
 やがて、顔全体が潤ってくれば、その方の顔の皮脂膜形成は、まったく問題がなく、もっと言うと、市販の保湿重視のスキンケア材では、オイリーになりすぎる可能性もあります。
しかし、ほとんどの方は。つっぱり感が持続したままでしょう。このとき、どこがどのように乾燥し、またオイリーなら、どの程度なのか、把握しておきます。




5 肌タイプは大きく4タイプ

水分:油分
  ×:×   <乾燥肌>油分も水分も少なめで、乾燥している状態 
 ◯:×   <標準肌>油分が少なめなので、乾燥しがちだが、保湿力はもっている状態
  ×:◯  <混合肌>油分はあるのに、場所によって乾燥している
 ◯:◯  <オイリー肌>水分・油分が多めでベタつきがち

それぞれの肌タイプは、以下のような問題をかかえがちです。
・乾燥肌
  ・老化しやすい 水分がなく、ハリがない。
  ・敏感になりがち 赤みやカユミが出易い。

・標準肌 
  ・季節の変わり目などにトラブルがおきることがある 

・混合肌
  ・スキンケア用品選びが少し難しい。

・オイリー肌
  ・ニキビができやすい


スキンケアはこの肌タイプに応じ、準備します。
さらに、タイプの中でも部位や部分、また時期によって、肌は変わります。それに応じて、外からケアできるのがスキンケアの利点です。

簡単ローションのレシピ

 では、肌のお手入れを見直すにあたって、最小限のスキンケアとはどんなものなのでしょう。最もシンプルなスキンケアといえば、ローションによるものでしょう。かつて日本の女性は、ヘチマ水というローションを作って、肌のお手入れに用いていました。これは、ヘチマの茎を、一晩水につけ、水にしみでたヘチマのカリウムなどの作用を利用したものです。

 現在では、一般的なローションは、主に水とグリセリンで作られた物です。水分がほとんどですから、肌に潤いを与えてくれます。さらに、グリセリンによって、肌の保水力はグンとあがります。

 しかし、いかにせん、水とグリセリンだけでは、機能的に乏しすぎる、と感じる方はクエン酸を加えてみてはどうでしょう。
クエン酸は、酸ですから、アルカリに傾いたPhを中和する働きがあります。肌は本来、弱酸性であるはずですが、この酸性度によって、皮膚常在菌の働きに影響が出ます。とくにアルカリ性に傾くと、酸性では難しかった黄色ブドウ球菌のような悪玉菌の繁殖がしやすくなるため、注意が必要です。
皮脂不足によって皮脂膜の形成がうまくいかない人の肌は、アルカリ性にかたむきやすいため、クエン酸を加えると、ローションが弱酸性になり、皮脂膜のPhが弱酸性であることを助けます。
皮脂膜だけでなく、皮脂と常在菌の状態も観察することも大切なことなのです。

最小限の成分で作られたローションで、肌がどのような反応をするのかを観察できるのも、シンプルスキンケアのいいところでしょう。

近年では、合成界面活性剤が皮脂膜の形成に悪影響がある、とする専門家もいますから、こうした心配な材料が気になる人にもシンプルスキンケアをすこしの間試してみるのはオススメです。
ただし、変質したローションはかえってお肌に悪影響をもたらしますから、品質管理はしっかりしておくことが大切です。

1 スキンケアの基本・皮脂膜の強化にはうってつけの素材


では、ここからは4つのタイプのうち、乾燥肌タイプに焦点をあてたスキンケアについて、紹介していこうと思います。
化粧水で水分の補給を行っても、皮脂の分泌が少なく、皮脂膜の形成が弱い人の肌は、どうしても水分の保持が苦手です。そこで、今度は皮脂膜の形成を補助するスキンケアについて考えます。
皮脂膜の形成が弱いといっても、皮脂の分泌がゼロ、ということはないはずです。そこで、皮脂の量を補うものを加えてみましょう。皮脂の主成分は、油分ですから、油分の補給が必要になってきます。

油分を補って、肌の乾燥の改善を目指したスキンケアは、古くから行われてきました。たとえば、インドではゴマ油、ヨーロッパではオリーブオイル、羊や馬の脂を用いるところもあります。
油ですから、水とは混ざらない物性があります。この性質を利用して、肌の水分の蒸発をカバーする、と考えれば、乾燥肌に有効であることは言うまでもありません。

前項のような、化粧水だけのシンプルなスキンケアで、どこに、どのように保湿したいかが分ったら、
オイルなどの油分を使って皮脂膜の形成を助けてあげる、プラスアルファのスキンケアに取り組むことができます。



2 アブラにもいろいろ


ところで、単に「アブラ」とか「オイル」というと、実に多くの物質があります。
これから私が紹介したい油分とは「油脂」のことを差すのですが、油脂の他にもオイルや油と名のつくものはたくさんありますね。
たとえば、石油などもオイルと呼ばれるもののひとつです。また、アロマテラピーで用いられるエッセンシャルオイル、というのもありますね。
これらは、油脂を含めて、どれも疎水性の物質ですので、その点は共通しますが、分子構造は全く異なるものです。
ですから、オイル(油)と一口に言っても、まったく違う物質も含んでいるのです。 
しかし、スキンケアには、これらのどのアブラも登場します。 

まずは、これら油脂とは異なるオイルの成分やスキンケアについて、簡単に説明しておきましょう。

3 アロマテラピーの精油とは


 アロマテラピーに用いる精油(エッセンシャルオイル)は、疎水性で脂溶性物質ではありますが、揮発性のテルペノイドと呼ばれる物質です。オイルと名がついていますが、「油」ではないのです。アロマテラピーでは、基本、エッセンシャルオイルをそのまま肌につけることはせず、キャリアオイル(ベースオイル)という油脂にまぜて、それを肌に塗布するなどし、植物のもつ有効成分を利用します。
 

4 石油と石炭
 

 石油は、石炭と同じく化石資源のひとつですね。その物質の生成においては諸説ありますが、主に太古の昔に倒れた木や、バクテリアなどの生物であったものが、地球の地殻変動の作用を受け、それぞれ、石炭、石油になった、との説が有力とされています。 

 かつて地球上にまだ酸素が少なく、生物の屍骸が腐敗や酸化分解される事無く、海底に堆積し、その層が地球の地殻変動の影響による、圧力や、熱の影響を受け、さらに貯まり易いところへと移動しながら、やがて石油へと変わったのだ、されています。
 また、石油を指して「ミネラルオイル」、または「鉱物油」と呼ぶこともあります。石油や石炭は、地層の奥深くに貯まっていることが多く、掘削するなどして、地中から取り出して使われます。
かつて、掘削して地中から得られる資源はみな、「鉱物」として扱われ、石油もその仲間に分類されていました。その名残から、石油そのものにミネラルは含まれませんが、今でも、「ミネラルオイル」とか「鉱物油」と呼ばれたりするのです。



5 石油由来製品の是非 
 

 石油は、主に炭素と水素のみでできた炭化水素という物質で構成されています。この炭化水素の分子サイズが短いものもあるし、長いものもあります。その構造によって、性質が異なるため、得られた石油は「分留」という作業により、分けられます。

 掘削された石油は原油と呼びますが、この原油を分子サイズに応じて分ける「分留」をすると、ガソリン、重油、軽油など、燃料に使えるものが得られます。その他のものが、さらに加工され、私たちの周りの様々なものに用いられています。

 化粧品の成分としてもよく記載されているミネラルオイルも、石油から分留され得られた「流動パラフィン」をもとに、さらに化学反応や精製を繰り返して得られたものです。

 戦時中など、質の悪いミネラルオイルが出回ったころ、精製が不十分で、精製しきれずに残存した石油由来成分が製品に混じったしまい、それが、皮膚の上で酸化され、いわゆる油焼けや炎症を起こした、という事例もありました。石油由来製品を安全に使おうと思えば、とにかく精製の精度が大前提です。近年では、そういったケースでのトラブルは非常に少なくなり、皮膚への吸着力や、保湿力の点では、すぐれた素材も数多く開発されています。

 さらに、石油由来のスキンケア材は、タンパク質を含みませんから、アレルギーの心配もないことになります。アレルギーの発症が決して珍しくない現代では、この点も石油由来の化粧品が選ばれる理由の一つでしょう。

一般に石油由来の炭化水素は、分子量が大きく、人体にとって栄養にはなりません。したがって、このような炭化水素を成分とするオイルを皮膚に塗っても、皮脂には馴染みますが、それが代謝されることはなく、また皮膚常在菌のエサにもならないとされています。(今後、変化する可能性もあります。)それゆえ、非常にニュートラルな物質なのです。つまり、利用できる栄養素を含まないため、人体にとっては何の化学反応もおきないのです。保湿材として、非常に優秀な物質ですが、単に蓋をして、水分を閉じ込めている、というだけにすぎないのです。

 しかし、この作用が好都合である人もいます。たとえば脂性肌のスキンケアにおいては、皮脂の分泌が過剰で、皮脂膜の酸化や常在菌の作用がかえってトラブルを招くこともあります。しかし、部分的な乾燥に対してオイルを用いようとすれば、このように栄養価のないオイルで、単純に水分を閉じ込めたスキンケアのほうが効果的であることもあるのです。 


 では、最後に油脂におけるスキンケアついてご紹介しましょう。
油脂とは、一般に生物が作り出す有機物のひとつです。栄養学的には糖質、蛋白質と区別して「脂質」と呼びます。糖質、蛋白質、脂質は、人体には不可欠な栄養素であり、3大栄養素とも呼ばれます。

脂質は、人体だけでなく、細胞をもつすべての生物に不可欠な栄養素です。脂質をどう利用するかは、生物によって若干の違いはありますが、どの生物にも共通する点があります。それは、生物の最小単位である、細胞の膜を構成する成分である、ということです。
生物の体は、細胞の集まりです。一つ一つの細胞は、膜で外界と内部を仕切っています。細胞内には、化学反応の場があり、それに必要な水分や栄養を出し入れする重要な役割を担うのが細胞膜です。細胞膜は、リン脂質という脂質が主成分となっています。

私たちの体の細胞は日々の新陳代謝で、新しいものと古いものが入れ替わっていますが、それを支えるのが食事です。
私たちの体は食事でとった栄養素をもとに、体内で様々な化学反応のすえ、最合成して作り出されているのです。
私たちの食糧となるものは、植物や、動物の肉など、他の生き物であることが
ほとんどです。これは、種は違っても同じ生物同士なので、生きるのに必要なものが似ていることがあるため、食べることで、それを利用している、ということなのです。
食べて取り込んだ栄養は、私たちの体内で起こる化学反応に用いられ、新たなものに作り替えられて利用されます。しかし、この作り替えたものも、人間用に作り替えられてはいますが、人間も生物としては同じですので、物質の組成自体は他の生物のものとそう違いは無かったりするのです。
皮脂においても同じです。人間の分泌する皮脂は、人間独特の組成ではありますが、似た物性をもつ脂質を合成する植物や動物は少なくないのです。

皮脂に似た物質を与える。これが油脂を使ったスキンケアの最大の特徴である、といえます。
似た成分であれば、成分同士はよくなじみます。
油脂は、ドライスキンの足りない皮脂を補う、格好の材料である、と言えるのです。


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